大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

仙台高等裁判所 平成4年(ラ)97号 決定

抗告人

本郷弘毅

右代理人弁護士

川田繁幸

山内満

虻川高範

横山慶一

主文

本件抗告を棄却する。

理由

一本件抗告の趣旨及び理由は、別紙抗告状写し記載のとおりである。

二当裁判所も、本件忌避申立を却下すべきものと判断するが、その理由は原決定の理由説示のとおりであるから、これを引用する。

なお、抗告人は、原決定には、忌避申立を受けている裁判官と配偶者の関係にある裁判官が忌避の裁判に関与していることをもって、公正さに疑問を生じせしめる事情が存する旨主張するが、何人も自分自身に関する裁判について裁判官になることはできないという観点から忌避の裁判に忌避申立を受けた裁判官が自ら関与することは禁止されている(民事訴訟法四〇条)ものの、それ以上抗告人の主張するような関係にある裁判官が関与することまで禁止されているわけではないから、原決定を違法と言うことができない。

三よって、本件抗告は理由がないから棄却することとし、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官齋藤清實 裁判官小野貞夫 裁判官小島浩)

別紙抗告状

抗告人 本郷弘毅

右抗告人訴訟代理人弁護士 川田繁幸

同 山内満

同 虻川高範

同 横山慶一

右抗告人を原告とし、申立外青森放送株式会社を被告とする青森地方裁判所平成元年(ワ)第三一二号地位確認等請求事件(平成二年(ワ)第三六七号未払い賞与請求事件を併合)について、一九九二年七月三一日青森地方裁判所民事部が、裁判官O、I、Tに対する抗告人の忌避申立を却下する旨の決定をしたが、抗告人は、不服であるから、即時抗告をいたします。

原決定の表示

事件番号 平成四年(モ)第三八六号

主文 本件忌避の申立を却下する。

抗告の趣旨

一、原決定を取消す。

二、青森地方裁判所平成元年(ワ)第三一二号地位確認等請求事件(平成二年(ワ)第三六七号未払い賞与請求事件を併合)について、裁判官O、I、同Tに対する忌避は、理由があるものと認める。

との決定を求める。

抗告の理由

一、原決定は、忌避の理由となる裁判の公正を妨げるべき事情とは、裁判官と事件との関係からみた客観的事情であることを要するとするが、証拠の採否・訴訟指揮権に属する事柄であっても、抗告人が、忌避申立書に記載したように当該事件について、裁判官の予断と偏見により、裁判の公正が害される危険が、著しく高い場合には、憲法により保護されている国民の基本的人権である公正な裁判を受ける権利を実質的に保護するためには、公正を妨げるべき事情に該当するものと言える。

二、また、原決定には、忌避申立を受けている裁判官Tの妻である裁判官T2が関与しており、原決定の審理経過にも公正さに疑問を生じせしめる事情が存する。

三、よって、抗告の趣旨記載の決定を求めて、本件即時抗告をなす。

一九九二年八月三日

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例